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3分でわかる電通の不正(不適切業務)とネット広告の闇について

3分でわかる政治経済と時事ニュース 3分でわかる政治経済と時事ニュース-電通の不正

日本の最大手広告代理店である電通が、ニュースリリースで「デジタル広告サービスにおいて、複数の不適切業務が行われていた」と発表しました。

日本国内のデジタル広告サービスにおける不適切業務の発生について

電通幹部は、上記リリースの直後に記者会見をし、今回の不適切業務が「不正」であったということを認めています。

具体的に何が行われたのか箇条書きで記すと、以下のとおりです。

  • 広告掲載期間のズレ
  • 広告の未掲出
  • 運用レポートの虚偽報告
  • 運用実態とは異なる過剰請求

これらの不正が、人為的ミスによって、あるいは故意に行われており、その他の不正に関しても、現在調査中、という発表でした。

この記事では、今回の電通の不正が一体どのようなものなのか、ネット広告における闇の部分についても言及しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。

 

運用型広告について

今回の不正を理解するには、まずネット広告における「運用型広告」というものを理解しなければなりません。

広告というのはいろいろあって、テレビ広告、雑誌広告、新聞広告など様々です。

紙媒体であれば、「ここに広告を掲載するには○○万円」といった料金体系でわかりやすいのですが、効果測定が極めて詳細に可能なネット広告においては、料金体系がかなり複雑化しています。

例えば、「1か月この枠にバナーを掲載します」という期間保証型広告があり、「1000クリックされるまで広告を掲載します」というクリック保証型広告があり、「10000PV獲得するまで掲載します」というPV保証型広告などがあります。

しかし、上記に挙げた形の広告というのは、現代ではもうかなり古いです。そんな広告に出稿するクライアントは稀です。

現代においては、今回の電通案件でも問題になった、「運用型広告」というのが主流になっています。

これは、基本的に広告がオークション方式になっていて、クリックやPVの単価をこちら側で入札し、条件が合致すれば広告が掲載され、クリックされる、という仕組みです。

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もっともわかりやすいのが、Googleが提供する検索連動型広告「Google Adwords」ですね。あの広告は「○○というキーワードが検索されたときに、広告を表示させたい」という場合に、その○○というキーワードに対して入札するわけです。その入札単価が高いほうがより上位表示され*1、クリックされると料金が発生します。

現在では検索連動型広告だけではなく、特定層向けメディアを集めた広告ネットワークを作って、そのメディア群の広告ネットワークで入札方式をとっている商品も多くなっています。(Ex.ママ向けメディアやIT関係者向けメディアなど)

広告主も「興味のない人に広告を打ちたくない」ので、より年齢、性別、興味嗜好をターゲティングして、限定的に広告を打つことが可能になりました。

そうなってくると、重要なのが「運用」になってくるわけです。

それぞれのアカウント画面からリアルタイムに入札して、広告の掲出状況を調整できるわけですね。

「あんまり掲出されていないなぁ」と思えば、入札単価を上げて、より掲出されるようにする。しかし、単価を上げすぎると、1クリック当たりの単価が上昇して、費用対効果が下がる。

その広告効果を最大限に高めることが、「運用」なのです。広告代理店は、この「運用」業務をしています。

 

電通の不正の概要

前提の説明が長くなってしまいました。ようやく、今回の電通の不正の概要について説明します。

非常にシンプルに説明すると、クライアントは「予算100万円で9月のネット広告運用して」という発注をするわけです。当然、この9月には「9月1日~30日までまんべんなく」という意味合いがこめられています。

電通は「わかりました!」と言って、その100万円を使って、前述した運用型広告を使って運用するわけです。

でもこの100万円を1か月間でまんべんなくきっちり使い切ることって、まあまあ難しいんですよね。入札方式ですから、他社が介入することなので、なかなか思い通りにいかない。

運用実績の虚偽報告

9月の前半は入札単価50円で運用してたけど、10万円分しかクリックされなかった…このままじゃ、やばい!残り半月は単価めちゃくちゃ上げて90万円分使い切らなくちゃ!ということも、よくあることです。クライアント側から見れば、広告予算として100万円確保しているので、100万円きっちり使ってもらわないと困るんですね。「なんかあんまり広告掲載されなくて、30万円しか使えませんでした~」というのは言えないわけです。だから、単価を上げてでも使い切ります*2

でも、このレポートをクライアントが見たら、どう思うでしょうか。

「おい、なんだこの急激な単価の伸びは!?ちゃんと運用やっていたのか!?」って、普通の広告担当なら言いますよね。

だから、レポートを改ざんするわけです。

クライアントに対するレポートというのは、アカウントの運用結果画面からCSVファイルか何かでエクスポートして、それを自社のExcelフォーマットにコピペして提出します。だから、そのExcelファイルの数字をちょちょっといじってしまえば、9月の30日間、良い感じで運用できてましたよ~というレポートを出せるのです。

これが、運用実績の虚偽報告です。

広告の不掲出

あるいは、こんなケースも考えられます。

9月100万円の広告予算で、最初の3週間だけで予算を使い切ってしまった!というケースです。

もう予算がないので、入札できません。そうなると、9月の残りの1週間は広告が掲出されないわけです。広告の「未掲出」ですね。これは、電通の記者会見でも「不正の例」として実際に紹介されていた事例です。

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まだ予算を使い切っての「未掲出」なら良いほうです。もっとも悪質なのは、予算を使い切っていないのに、使い切ったと虚偽の報告をして請求をする「未掲出請求」です。

9月100万円の予算なのに、月末までに60万円分しか予算消化できなかった…。でも100万分消化したことにして請求してしまおう!というケースです。

今回の電通の不正も、このケースがありました*3。クライアントからしてみれば、40万円分は、広告未掲出なのに請求されてしまっている。由々しき事態ですね。

これは広告の不掲出、あるいは過剰請求とも言える事例です。

 

なぜ発覚したのか?

今回の不正は、あるクライアントからの指摘によって発覚しました。それは、トヨタです。おそらく、電通の中でもトップレベルの予算を割いてくれているクライアントでしょう。

トヨタの広告担当者が、「ある時期における広告効果が期待値に比べ、一向に上がってこない。本当に掲載されているのか?」と疑義を持った。そこで、今回の発覚につながりました。

ここまで不正が発覚しなかったのは、「今までもそういう指摘があったが、黙殺されてきた」あるいは、「クライアントの広告担当者がそこまで詳細に期待値と実績の分析をしてこなかった」など考えられますが、今までにそういう指摘がなかったとはちょっと考えにくいです。各社の広告担当者だって、おしなべて広告効果の分析に疎い、なんていうことは考えにくいです。

おそらく「指摘してきたクライアントがトヨタだった」というのが一番大きいでしょう。電通にとっては、絶対に無視できないクライアントです。そのクライアントが「大丈夫なの?」と言ってきたから、本気で社内調査をしたのだと思います。

現在までに発覚している不正に係る業務の対象となる広告主は111社。金額は約2億3千万に上る。

 

ネット広告の闇と電通(広告代理店)のモラル

管理画面の閲覧権限を持っていないクライアントは、基本的に代理店からのレポートを信じるしかないわけです。

代理店は、広告主がアカウント画面にログインすることを嫌がります。それは、運用画面をいじられると困るからです。

広告の管理画面をクライアントと共有している代理店がどれほどあるのかわかりませんが、今回の発覚の経緯から推測するに、電通とトヨタはおそらく、管理画面の共有をしていなかったのでしょう。

代理店は、レポートを改ざんしようとすれば、いくらでもできます。Excelファイルをいじるだけです。

ネット広告の闇とは「代理店が運用するシステムでは、本当に広告が運用されているのか検証することが難しい」ということです。

新聞広告やテレビCMのように、「あっ、ちゃんとうちの広告出てるね」と確認することが困難です。なぜなら、ネット広告が表示されるのは、各個人のPCやスマートフォンだったりするわけですから。

だから、その代理店がそのレポートをいじることは絶対にやってはいけないことなのです。そのレポートを改ざんすると、ネット広告の信頼性が完全に崩れます。そこは、広告代理店のモラルが問われる部分であります。

しかしながら、今回の一件があって、もしかしたらクライアント側から「アカウント画面を見せてくれ」という要望が多くなるのかもしれません。アカウント画面を共有することになれば、レポートの改ざんというのは一気に減るでしょう。

電通の一件は、氷山の一角であるという気がしてなりません。

 

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参考・関連記事

「食べログの信頼性が損なわれた理由」/口コミサイトが独立性を保つことの難しさ - さようなら、憂鬱な木曜日

電通「これは事実です」 トヨタなど100社への広告料金の不正請求疑惑について : 市況かぶ全力2階建

電通「不適切と表現したが、まあ、不正です」:日経ビジネスオンライン

*1:Adowrdsには品質ランクというものがあり、入札単価×品質ランクの方式で上位表示される。単純に単価が高ければ上位表示されるというわけではない

*2:クリック単価重視の広告主もいる。その場合、予算を使い切るよりクリック単価重視の運用がされる

*3:現在までに分かっている金額は総額320万円

新副大臣に多額の借金を抱えている議員がいるんだけど、大丈夫?/閣僚資産公開制度

ニュース ニュース-閣僚資産公開

先週、土曜日の朝に日経新聞を読んでいたら、こんな記事が出ていました。

稲田氏ら3人が1億円超 新10閣僚資産公開 :日本経済新聞

日本は閣僚資産公開制度というものがあって、閣僚ら要人は就任時と退任時に保有資産を自己申告で公開します。

第三次安部再改造内閣で防衛大臣となった稲田さんは今回の入閣メンバーではトップの資産を持っている、という記事でした。

私はこういう記事を読むのが好きなので興味深く読んでいました。

日経新聞紙上では、閣僚だけではなく、副大臣や政務官まで紙面にびっしり記載されていたのですが、その中に、一人気になる議員の方がいました。

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(引用:9/18付日本経済新聞朝刊より)

橘慶一郎復興副大臣です。

この人の資産内容は以下のように申告されています。

====================

土地・建物 4854万円
預貯金・有価証券 4333万円
借入金 38320万円

====================

資産が1億円近くあるのはいいけれど、借入金、つまり借金が4億円近くあります。紙面上にそんな議員はいません。飛び抜けた数字です。

私がこの数字を見た時の率直な感想は「大丈夫なの?」ということです。

資産を超過した多額の負債は、正常な政治的判断をする際に、障壁とならないのか、と心配してしまいました。

 

橘慶一郎復興副大臣のプロフィール

橘慶一郎氏は東大法学部卒の自民党所属衆議院議員です。初当選は2009年の富山3区で、第二次安倍内閣では総務大臣政務官を務めました。そして今回、復興副大臣となりました。

今回の資産公開で、橘議員の奥さんが東京電力の株を保有していることが判明し、復興副大臣が東京電力の株主とは何事だ、と指摘されたりしています。

<閣僚資産公開>復興相が東電株保有 副復興相も妻名義で (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

私としては、600株ぽっちの東電株より、4億円の借金が気になります。

 

浮上する数々の疑問

この負債について、私はいくつも疑問が出てきてしまいます。

いったいなぜ、こんなに多額の負債を抱えてしまったのか?

この借入金はどこから借りたお金なのか?

返す当てはあるのか?

マスコミの方々には、東電株より借入金について質問してほしかったと思っています。

 

公開した以上は説明するのが適切では?

私はこの記事において、橘慶一郎議員の政治家としての資質を疑問視しているわけではありません。

しかし、これだけ負債が上回っていれば「これどうしたの?」と思う気持ちは当然のことです。

橘慶一郎氏は、資産負債を公開した以上は、この件について、国民に対してしっかりと説明をしていくのが適切なのではないでしょうか。

(すでに説明されていたらすみません)

 

閣僚資産公開とは?

首相や閣僚、副大臣、政務官らが就任時と退任時に本人、配偶者、扶養する子の資産状況を自己申告で公開する制度。地位を利用した不正蓄財を監視するのが目的で、現行制度は2001年に閣議決定した「大臣規範」に基づく。株式は銘柄と株数だけを公開し、ゴルフ会員権や美術品、自動車などの金額も表記しない。普通預金は公開対象外で、不動産は固定資産税の課税標準額によるため、実態が反映されていないとの指摘が出ている。(引用:日経新聞より)

 

橘慶一郎 - Wikipedia