さようなら、憂鬱な木曜日

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

さようなら、憂鬱な木曜日

サラリーマンの投資ログなど

ドワンゴ川上氏への「極めて不愉快」発言は宮崎駿氏が圧倒的におかしい

エッセイ エッセイ-宮崎駿

11/13放送のNHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」を観た。

一度は一線を退いた宮崎駿氏が、CGとの出会いをきっかけに短編の制作に取り掛かり、ラストではまた長編に取り掛かるかもしれない、というところまで取材した番組だ。

この番組の中でのあるシーンが、各所で話題を呼んでいる。

ドワンゴの会長である川上氏が宮崎氏へのプレゼンの中で「人工知能が作った、痛覚がなく頭部を使って歩くCG」を発表したときのことだ。

川上氏がこのCGを「気持ち悪い動きをするので、ゾンビゲームの動きに使えるんじゃないか」と言って宮崎駿氏に紹介したところ、宮崎氏は川上氏を目の前にして「極めて不愉快」と一蹴した。

宮崎駿監督、ドワンゴ川上量生会長を一喝「生命に対する侮辱」

宮崎氏は、「毎朝会う、身体障碍の友人のことを思い出して、面白いと思えないですよ。極めて、なにか生命に対する侮辱を感じます」と強い口調で川上氏へぶつけた。

私は、この件について、宮崎駿氏に対して強い疑問を持った。あなたこそ、他人の仕事を侮辱しているのではないのですか?

f:id:goodbyebluemonday23:20161114192514p:plain
(引用:NHKドキュメンタリー - NHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」

 

信念を持った他人の仕事を否定する権利は、誰にもない

私はまず、世界が認めるアニメーター宮崎駿に、ここまで言われた川上氏の気持ちを思うと、心が苦しくなる。何か創作のヒントになれば、そういった善意で川上氏は、自分たちが作っているものを紹介したはずだ。

きっと、彼らは彼らなりに、一生懸命に、人工知能が作るCGという仕事に信念を持っていて、必死に取り組んでいるのだと思う。

それを、「極めて不愉快」と言うのは、いくらなんでも失礼ではないだろうか。「面白くない」というのならわかる。「極めて不愉快」というのは、完全なる否定である。彼らが必死に取り組んできた仕事を完全に否定してしまったのだ。

確かに、宮崎駿氏の作品は「生命」をとても丁寧に描こうとしている。生命の躍動、葛藤、苦しみ、喜びを表現しようとしている。そんな宮崎氏から見て、ドワンゴの彼らが作ったCGは、「生命を侮辱している」ように見えたのかもしれない。

しかし、常識的に考えて、彼らが、何かを侮辱しようとして、そのようなCGを作っていることは考えにくい。わざわざ、巨匠宮崎駿にプレゼンするほどのものだ。自分たちが「面白い」と思って制作し、歩みを進めているところだ。

宮崎駿が気に入らないものは、すべてダメ。不愉快。無意味。宮崎氏の断定的な口調からは、そんな傲慢さが見て取れた。

私は思うのだが、いくら世界的に認められた大御所クリエイターだとしても、モラルや法に反しない限り、他人の仕事を真っ向から否定する権利はない。それは、社会人として当然のことだろう。

「私の作るものには必要ない」というのなら、もっと他に言い方はあるだろう。こんな強い言葉で、相手に直接投げかける必要はあったのだろうか。

私はこのシーンにおける宮崎駿氏を、とても失礼な人だと思った。

 

不要だった鈴木プロデュサーの発言

それから、私がもっとも不愉快だと思ったのは、宮崎氏の隣に座った鈴木敏夫プロデューサーの発言だ。

宮崎氏が憤慨して一通り言い終わったあと、追随するかのようにこう言い放った。

どこへ、たどり着きたいんですか?

まるで「なぜあなたたちはこんな無意味なことをやっているのか?」とでも言いたげな、冷たい一言だった。

私はこの一言が、非常に気になった。

宮崎氏の意向に沿って発言するまさにイエスマンのようなコメント。鈴木氏が、このコメントを発する必要はあったのだろうか?

宮崎氏のコメントは、もしかしたら川上氏をクリエイターとして、身内として感じ、道を踏み外さないでほしい、という意味合いで言ったのかもしれない、という考え方もできる。

しかし、鈴木氏の一言には、逃げ道がない。

うちの宮さんが気に入らないものを持ってくるんじゃない、とでも言いたげな、明らかに上から目線の、とても辛辣な、愛のないコメントだと思った。

 

宮崎駿は「新しいものが嫌い」なのか?

このシーン以外にも、番組の中盤で、制作に関わっているCGスタッフが、みんなスターウォーズの試写会に行ってしまって、スタジオががらんとしている日があった。

その時の宮崎氏はまるで子供のように、明らかにいじけていた。

机に向かいながら、「みんなスターウォーズやりたい(って言いだすんじゃないか?)。毛虫じゃなくて」とぼやいていた。

私の感覚であれば、新しくCGに取り組んでいる今の宮崎氏ならば、最新のCG技術を駆使したスター・ウォーズ最新作は、見たら面白いんじゃないか、と思ってしまう。

宮崎氏ほどの人に対してそんなことを思うのは、それこそ失礼なのかもしれないが、私はこのシーンを観て、「宮崎駿さんって新しいものがあまり好きじゃないのではないだろうか」という印象を持った。

だからこそ、人工知能が作ったCGという最先端の技術を、理解できなかったのかもしれない。

 

傲慢さは偉大さをかき消してしまう

私は、別に川上氏を擁護したいわけではない。

川上氏がどういう仕事をやってきたのか、はっきり言って詳細には知らないし、この宮崎氏へのプレゼンのあと、Twitterでいろいろ暴言を吐いていた、などの情報もある。しかし、それは、今回私が思ったこととは直接関係ない。

この記事は、ドワンゴと川上氏が、善意で宮崎駿氏にプレゼンをしたら、完全に否定された、というシーンに基づいて書かれている。

逆に言えば、この番組を通して観れば、宮崎駿氏が、どれほどの情熱とこだわりを持ってアニメーション制作に取り組んでいるかがよくわかる。

一度は引退を決意したものの、それでもなお制作から逃れられず、衰える身体と付き合いながら机に向かう姿に心を打たれる。

私はジブリ作品が大好きである。ラピュタ、千と千尋、ナウシカなどはそれぞれ10回以上観たし、ほかの作品だって何度も見ている。私は宮崎駿さんを、偉大なクリエイターだと思っている。私が言うまでもないが。

しかし、傲慢さは偉大さをかき消してしまう。私は、川上氏の仕事を否定する宮崎氏を観てショックだった。とても悲しかった。