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最短でも2年かかる?イギリスEU離脱への道|これからの流れや手続きについて

ニュース ニュース-イギリスのEU離脱問題

世界に衝撃が走ったイギリスのEU離脱を問う国民投票から数日が経ちました。

世界のマーケットはいまだに動揺を取り戻せずにいますが、イギリス国民が「離脱」という選択をした以上、イギリスはEU離脱に向けての手続きを進めていくことになります。

しかしながら、「じゃあ明日からイギリスEU抜けまーす!」という簡単な話ではありません。すでに報じられたニュースなどで聞いた人もいるかもしれませんが、イギリスがEUを離脱するには最低でも2年以上かかります。

これは、EUの離脱に関する規定がリスボン条約というものに定められているためです。リスボン条約第50条では、EU脱退の意思を表明しても、EU法の適用を受けなくなるまでに2年かかる、と明示されているのです。つまり、2年間、イギリスはEUに留まったまま猶予期間があるわけです*1

正直、「え、そんなかかるの?」という印象です。早くても2018年後半です。まだまだ大分先の話のように感じます。

そこで今回は、イギリスがEUを離脱するまでの流れや手続きにについて、エッセンスを絞ってまとめてみたいと思います。

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第1ステップ EU理事会への「通告」

まず、イギリスがEU離脱に向けて一番初めにやらなければいけないこと。それは、EU理事会への「通告」です。

これは、EUの偉い人たちに対して正式なかたちで、「イギリスはEUを離脱します」と宣言するわけです。離脱に向けた手続きは、ここからスタートします。冒頭に申し上げた2年の猶予期間もここからカウントされます。

この記事を執筆時点ではイギリスは未だこの「通告」をEU理事会に対してしていません。つまり、EU離脱に向けた手続きは、まだスタートさえしていない状況です。

 

第2ステップ EU委員会との「交渉」

EU理事会への通告が終わると、今度は離脱の条件や段取りをEU委員会と「交渉」します。これが、もっとも時間がかかるだろうと予測されています。

関税はどうなるのか、人の移動はどうするのか、など細かい部分までしっかりとした協定を作って結ばなければなりません。

EUとイギリス、どちらも自分に有利な協定を結びたいと思っているわけです。何しろ、EUから加盟国が離脱するのは前例のないことです。お互いの利害を調整するための交渉は、難航が予想されます。

現在のところ、EUはイギリスに対して厳しい態度で交渉に臨むことが予測されています。それはなぜか?ここで甘い顔をすれば、第2、第3のEU離脱が起きてしまうからです。EUが今一番恐れているのは、「離脱の連鎖化」です。ドイツのメルケル首相は「離脱についての事前交渉には一切応じない」とイギリスをけん制しています。

【英EU離脱】独仏伊首脳、事前交渉拒否を確認 「無駄にする時間ない」と早期離脱促す - 産経ニュース

ちなみに、現在のところ、イギリスが目指しているのは、カナダ・モデルの協定だと言われています。カナダはEUと独自の協定を結んでおり、ほとんどの品目について、関税がかかりません。イギリスは輸出におけるメリットを生かしたまま離脱したいとなれば、こういった脱退協定を結ぶ必要がありますが、カナダはこの協定を結ぶまでになんと7年かかっています。イギリスがカナダ・モデルと同等の協定を結ぶとすれば、同じくらいの期間がかかるだろうと予測されています。

もうひとつ現実的な線として、ノルウェー・モデルの協定があります。これは実質的にEU加盟国と同等のメリットが与えられるものの、EUにおいて決められた様々なルールに従う必要があり、さらにはEUに対して上納金も支払う必要があります。離脱交渉の短縮化は期待できるものの、イギリスにとってはEU離脱前とあまり変わらない状況になりかねません。それどころか、EU内における規則の決定について口出しできなくなるという点において、離脱前よりも苦しい状況と言えるかもしれません。

 

第3ステップ EU議会における「承認」

紆余曲折あって、ようやく脱退協定がまとまったとします。その次は、この案をEU議会にかけて「承認」を得る必要があります。「承認」を得るためには、議会の過半数の承認票が必要になります。

 

第4ステップ EU理事会における「承認」

さて、EU議会において過半数の承認を獲得した脱退協定案は、次にEU理事会において「承認」される必要があります。ここでの承認は、27カ国中20カ国以上(ただし、それらの国の人口がEU全体の人口の65%以上を占めなければならない)が賛成すれば良い、とされています。

 

脱退協定の発効

EU理事会にて脱退協定案が承認されれば、その協定の発効日から、イギリスはEUを離脱することになります。これでようやく、「イギリスのEU離脱」が完了します。

書いていて、ちょっと気が遠くなりました。超大変です。これは、本当にすべてがスムーズにいっても2年やそこらで離脱できるの?と懐疑的になってきました。

 

現在のイギリスと今後について

国民投票で「EU離脱」を突き付けられたイギリスのキャメロン首相は、即座に辞意を表明しました。

キャメロン首相は「残留派」であったため、EUとの離脱交渉をする気はありません。だから、イギリスはまだEU理事会への「通告」をしていないわけです。「通告」をしないとEU離脱交渉はスタートしないわけですから、キャメロン首相がイギリスのトップである限り、イギリスはEU離脱への道を踏み出せないわけです。

英、EU離脱交渉「9月以降」要請へ 首脳会議で :日本経済新聞

次の展開としては、9月に行われるイギリス与党保守党の党首選において、キャメロン首相の後任が決まる予定です。

イギリスが「通告」をするのは、この後任が決まった後であると、キャメロン首相は明言しています。離脱交渉はそのあとになります。

ちなみに、この党首選も一筋縄では行かないようで、本命は「離脱派」のリーダーであったジョンソン元ロンドン市長なのですが、「残留派」のメイ内相の支持も高く、かなり拮抗しているようです。

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(引用:離脱派vs.残留派再び 英、次期首相選び始動 :日本経済新聞)

この党首選でも「離脱派」対「残留派」の争いが予想されています。例えばここで、「残留派」のメイ内相が党首に選ばれて首相として就任した場合、離脱交渉はどうなるのでしょうか。国民投票に法的拘束力はありませんが、「離脱、やっぱりやめた」という姿勢をイギリスが取ることは、現実的には考えにくいです。そうすると、「残留派」寄りの交渉をすることになり、「離脱派」が当初考えていた「EU離脱」のイメージとは離れていくように感じます。

 

EUの姿勢とリスボン条約第50条の問題点

さて、一方のEUですが、「イギリスさん、離脱するなら早くしてください」と言っています。EUはイギリスとのゴタゴタが長引けば長引くほどEU経済に与える影響は大きいと考えており、すぐにでも出て行ってもらいたいようです。

しかしながら、キャメロン氏に離脱交渉の意思がない以上、イギリスからの「通告」を待つことしか出来ず、「後任が決まるまで待ってほしい」との要請を受け入れるしかない状況です。

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この「離脱のカードは離脱国が持つ」というリスボン条約の規定はやや問題視する声が上がっています。今回、EUを離脱する国が初めて出たことで、リスボン条約第50条の問題点が浮き彫りになったかたちですね。

今後もイギリスのEU離脱に向けた動きとEUの対応から目が離せません。

 

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www.goodbyebluethursday.com

*1:脱退協定がすぐに締結され、その効力が2年以内に発効されれば、発効時からイギリスはEU離脱できますが、できるだけEU離脱を遅らせたいイギリスがそんな協定を結ぶことは考えにくいでしょう