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3分でわかるスコットランドの独立問題とその影響について

記憶に新しいイギリスのEU離脱ショックからはや8カ月。「さんざん騒いだけど、結局大したことなかったな…」と思っている方も多いかもしれません。(我々の実生活には、まだ明確な変化は現れていませんね)

しかし、実は、あまり報道されないところで、もうひとつの“Exit”が着々と進んでいることをご存知でしょうか。それは、「スコットランドの独立問題」です。

イギリスのEU離脱が決まった後、スコットランド内でも独立の機運がかなり高まり、スコットランドのスタージョン首相は、スコットランド独立の準備を着々と進めてまいりました。

そして、スコットランド独立の是非を問う住民投票の法案を作成するところまでこぎつけています。

そもそも、スコットランドってどこ?という人もいるかもしれないので少し解説すると、イギリスというのは、4つの地域で形成される連合王国なのです。4つの地域というのは、「イングランド」「スコットランド」「北アイルランド」「ウェールズ」のことです。これらの地域を一つの国として、正式名称が「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」、通称「イギリス」と呼ばれています。

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多くの人が“イギリス”と言ってまず思い浮かべるのは、ロンドンがある「イングランド」のことだと思います。サッカーのワールドカップでは、イギリスとしてではなく、それぞれの地域で出場していますね。

飽くまで、国として連合しているだけであって、歴史的に合併や併合をしてきたので、地域間の違いや対立というのは今でも色濃いようです。

さて、それでは今回、イギリスのEU離脱を契機に、なぜスコットランドの独立問題が大きくクローズアップされるようになったのでしょうか。

できるだけわかりやすい言葉でまとめてみたいと思います。

 

なぜスコットランドは独立したいのか?

まず、そもそもなぜスコットランドは独立をしたいのでしょうか。そのキーワードは「北海油田」です。

スコットランドの海域内には、1975年から産油が始まった北海油田があります。これが金の生る木(海)で、イギリスの財源に大きく貢献しています。年間で約8,200億円を生み出しているといわれています。

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しかし、自分たちの地域からそのような財源が捻出されているにもかかわらず、スコットランドの人口というのは、イングランドの約10分の1で、当然イギリス議会における議席数もイングランド人には遠く及びません。

だから、ずっとスコットランドは、「お金だけ取られて、自分たちの声は政治に反映されない」状態だったわけです。

こういった経済的政治的不満が募っていき、独立運動に発展するわけです。

スコットランドが独立すれば、この北海油田からの利益のほとんどを確保することができ、スコットランド人1人あたりの所得が約17万円も上昇する、とまで言われています。

 

前回の住民投票で、独立反対派が勝った理由とは?

実はスコットランドは、2014年に一度、イギリスから独立するかどうかの住民投票を行っています。

その時の結果は、独立賛成が44.7%、独立反対が55.3%で、イギリスに残ることになりました。

争点は結局先ほど挙げた経済的政治的不満なのですが、なぜスコットランドの住民は、独立反対の票を投じたのでしょうか。

それはイギリスから独立した場合に、それはEUからも離脱することと同義だったからです。

スコットランドが独立すれば、ひとつの国として国際社会に認識され、単独でEUに加盟しなければなりません。

つまり、一度は離脱しなければいけないわけで、EUから離脱すると、スコットランドに拠点を置く企業や金融機関は、免許などの関係でEU内でのビジネスがやりにくくなってしまうため、他のEU地域へ逃げ出してしまうのです。

そうすると、スコットランドの雇用がガクッと減り、失業者増加、景気減退というリスクがありました。

だから、スコットランドの住民は、そのリスクを考えて、2014年時点では「納得いかないけど我慢しよう」となったわけです。

 

イギリスがEU離脱?話が違うじゃないか!

しかし、みなさんご存知のように、2016年6月の国民投票で、イギリスがEU離脱に向けて歩き出すことが決まりました。

そうなると、スコットランド人にしてみれば、話は変わってきます。

EUにいたいから我慢してイギリスにくっついていたのに、イギリス自体がEUを離脱してしまったら意味がないじゃないか!となるわけです。先日のイギリスのEU離脱国民投票でも、スコットランド地域だけに限ってみれば、離脱38%、残留62%と、圧倒的に残留派が多かったのです。

つまり、前回の住民投票で独立反対派の主張していたメリットが、完全に崩れ去ってしまったわけですね。

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こういう事態になったからには、「もう一度スコットランドの独立を!」という声が挙がるのも無理はありません。

 

スコットランドが独立したらどうなるのか?

さてさて、それではスコットランドが再度住民投票を実施して、独立賛成が反対を上回り、無事にイギリスを独立することが決定したとします。その後、スコットランドは幸せな結末を迎えるのでしょうか。

残念ながら、独立の道にはなかなか厳しい壁が待っています。

そもそも、スコットランドの独立は、北海油田を発端とする経済的政治的不満が根底にあったのですが、今回の住民投票における争点は「EUに残るかどうか」です。

スコットランドが独立した場合、前述したとおり、ひとつの国として新たにEUに加盟することが必要となってきます。

EUに加盟するためにはコペンハーゲン基準というものがあり、経済、政治、法律などが一定の基準を満たしていないと、加盟できないのです。

ギリシャのような経済的に破たんしている国を入れてしまうと大変なことになるため、厳格な基準となっています(ギリシャは加盟した後に、国の決算書を改ざんして大きな負債を隠していたことが後になって判明しました)。トルコは歴史的な理由を背景に、EUに加盟できずにいますね。

 

スコットランドは独立できるのか?

さらに、その基準を満たせたとしても、もうひとつの壁があります。それは、独立志向の高い地域を抱える各国の反対です。最も強い反対を示しているのが、カタルーニャ地方の独立問題を抱えるスペインです。

実は、カタルーニャ地方は、スコットランドと同じく2014年に住民投票を実施し、圧倒的多数の賛成で独立派が勝利しています。しかし、この住民投票は、中央政府が実施したものではないとされ、裁判所により違憲無効となりました。ですが、独立機運が燃え滾っているのは明らかです。

スコットランドが独立してEUに加盟し自立の道をたどっていくなら、当然カタルーニャの住民たちも勢いづくでしょう。だから、スペインはスコットランドには独立してほしくないし、EUにも入ってほしくないのです。

イギリスで国民投票EU離脱が決定した後、スコットランドのスタージョン首相はすぐさま「スコットランドはイギリスから独立してEU離脱を」という姿勢を打ち出しました。しかし、その姿勢にスペインのラホイ首相は強い難色を示しています。

しかし、それでもスタージョン首相は、独立の是非を問うための住民投票の法案を作成し、独立へ向けての歩みを止めません。

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加盟交渉に際して、EU加盟国すべての承認が必要だ、という法律はありませんが、実質的に加盟国のひとつが強く反対しているとなると、交渉は難しくなることが予想されます。

 

まとめ

実は、イギリスのEU離脱が決定し、スコットランドが独立の声を再び上げたとき、ウェールズと北アイルランドでも「俺たちも独立だ!」との声が強くなりました。

4つの地域で連合していたグレートブリテンは、今、バラバラになろうとしています。

イギリスは、そしてEUは、この難局をどのように乗り越えていくのでしょうか。

 

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スコットランド 独立の成算は (写真=AP) :日本経済新聞